損害賠償保険のうんちく

私の扱った事案で、自分一人では着替えもできず、杖をついてどうにか歩けることは歩けるものの、介護者がついていないと転倒の危険がある三〇代の男性がいました。実際彼は、介護者がいないとき、緩やかな坂道で転倒し、肋骨を折る怪我までしています。四肢が麻蝉し、手の指も満足に動きませんので、パソコンを打つことすらできません。仕事ができる状態ではありませんから、勤めていた不動産会社も辞めました。私は彼の代理人として、後遺障害等級一級の認定を申請しました。自賠責の後遺障害等級は一級から一四級まであります。一級が一番重く、一四級か一番軽いのです。終生、全く働けない状態は、三級以上になります。彼のケースで自賠責損害調査事務所が下した結論は一四級でした。なぜか。現在、彼の症状が深刻な状態にあるらしいことは分かるが、交通事故を原因としてそうなったのか、医学的な因果関係がはっきりしないという理由です。事故に遭うまではピンピンしていて、事故のあと、こうなったんだから因果関係があるに決まっているではないか。被害者は誰しもそう考えます。ところが、事故による受傷内容とそこから現在の重篤な症状が派生したということを、医学的に完璧に証明しないと、自賠責は認めようとしません。薄情です。因果関係の立証こそ、被害者を苦しめる壁なのです。
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